2025年7月3日
印刷事故防止のために
Mac環境で起きる『隠れフォント』の落とし穴
Mac環境で起きる『隠れフォント』の落とし穴
インストールしていないフォントがIllustratorで使えてしまう!?
気にせず使っていた“インストールされていないフォント”
Macユーザーの皆さん、こんな経験はありませんか?
PDFに書き出したら、「1が3に」「AがCに」文字化けしている!
PDF互換のAI保存データの場合でもInDesignに配置した際に化けている事も…
フォント名でMac内を検索しても見当たらない。Font Bookにも出てこない。
でもIllustratorでは通常通り「表示」もされるし「選択」できてしまう…なぜ!?
この現象、Microsoft Office for Macをインストールしている環境であれば、じつは多くの方に起こりうる落とし穴なのです。
Contents
原因は「Officeアプリに内包された隠れフォント」かも
MicrosoftのOfficeアプリ(Word、Excel、PowerPointなど)をMacにインストールすると、各アプリの内部にMicrosoft独自のフォントがバンドルされています。
このフォントは通常のフォントと異なり、以下の場所に格納されています。
//Applications/Microsoft Word.app/Contents/Resources/Fonts/
このように、Macの一般的な「Fonts」フォルダに存在しないため、FinderやFont Bookでは検出できません。
しかし、Adobe Illustratorなど一部のアプリは、アプリ内の特殊フォントも読み込んでしまうため、まるで「使えるフォント」のように表示されてしまいます。
なぜ文字化けする?PDF書き出し時のトラブル
こうした“Office内包フォント”をIllustratorで使って作成したデザインを、PDFに書き出すとき、以下の問題が起きることがあります。私たちも、実際に経験済み。校正段階で気がつき対処しましたが、そのまま校了、印刷されていたら大事故です。
- フォントが埋め込まれずに代替表示される!
- 一部の文字が別の文字に置き換わる!(例:1→3、A→Cなど)
- 当然、受け取った相手側でも正しく表示されない!
これは、そのフォントがIllustratorから見えていても、PDF生成時にフォント埋め込みに対応していなかったり、Adobe側で正しく解釈されていないため、と考えます。
もっと厄介なのは「警告が出ない」こと
通常、Illustratorで未インストールのフォントを使っている書類を開こうとすると、開いた時に「フォントが見つかりません」とアラートが出ます。
しかし、Officeのアプリ内にあるフォントは、システム上に“存在するように見える”ため、Illustratorが警告を出しません。
つまり、ユーザーは「使えるフォント」と誤認したまま作業を進めてしまうのです。
実際の被害例(よくあるパターン)
- 請求書や案内状をデザインしてPDFで納品 → 相手側で「数字が崩れて読めない」
- 名刺やパンフレットを入稿 → 印刷会社で「文字化けが発生」と連絡
- 取引先が開いたPDFで数字が「別の数字」に変わってしまう
これらトラブルの要因の1つに、「Office由来のフォントをIllustratorで使ってしまったこと」が起因しているケースがあります。
Office内包フォントの多くが欧文書体なので、数字やアルファベットを「デザイン的」に使用している箇所で起きているケースが多いように感じます。
対策・再発防止策
1.「システムにインストールされたフォント」以外は使わない
Font Book(フォントブック)に表示されていないフォントは使わないのが基本です。
2.フォントを検索しても見つからない場合は「Office内包フォント」を疑う
該当フォント名でFinder検索してもヒットしない場合、Microsoft Word.app内をチェックしてみましょう。
3.Illustratorの「使用フォント一覧」で確認する
制作中に「どのフォントが使われているか」は、Illustratorの【書式】メニュー →【フォントの検索】で確認できます。
4.書き出す前にアウトライン化する
フォントをアウトライン化してからPDF化することで、文字化けのリスクを回避できます(ただし編集不可になる点に注意)。
5.書き出す前にアウトライン化する
該当するOffice内包フォントを探しだし、Font Bookでシステムに正しくインストールする。
6.チーム内・社内に注意喚起を
このようなトラブルはチームで共有されにくく、何度も同じ問題が起きがちです。
制作ルールやチェック項目として明文化することをおすすめします。
7.正しくFont Bookにインストールする
Microsoftアプリケーション内のフォントは全て削除し、それらをFont Bookにインストールする。
これが一番安全かと考えます。バンドルフォントの大半はTrueTypeです。Macにもインストール可能ですので、MicrosoftアプリケーションのFontsフォルダ内のフォントを全て影響の出ないデレクトリに移動した上で、使用したいフォントをダブルクリックするとインストールが可能になります。ただし、Microsoftアプリケーション側で何かしらの問題がでるかもしれません。必要であれば、書体を選んで実行するとよいでしょう。実際にillustrator上での「1」がPDF書き出しで「3」に置き換わってしまうトラブルは、システムにインストールするこの方法で解消されました。
まとめ:Office導入環境では『見えないフォント』に要注意
Microsoft Office for Macのインストールは、知らず知らずのうちに隠れたフォント環境をつくり出します。
Illustratorで思わぬ文字化けやトラブルを防ぐためには
- 見えても「使っていい」とは限らないフォントがある
- フォントの出所を確認する
- PDF書き出し前にアウトライン化や確認・校正作業を徹底する
という認識が重要です。
制作物の信頼性を保つためにも、日々使っているフォント環境を今一度見直してみましょう。